阪神・淡路大震災の後、避難所や救護所で診察、カウンセリングを続けた精神科医安克昌さんをモデルにしたNHKのドラマがある。この中で主人公がつぶやいたセリフが印象的だ。心のケアってなにか、分かった。誰もひとりぼっちにさせへん、てことや―
▼大災害から16年後、私たちは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経験した。国内外からたくさんの支援をいただき励ましの言葉をもらった。大丈夫? 大変だけど頑張って。ありがたいと思う半面、これ以上何を頑張ればいいのか分からない―。そんな複雑な思いも聞いた
▼励ましの言葉があふれていた中で、心に届いたものの一つが、ドラマのセリフにも通じる「ひとりじゃない」。この言葉に背中を押してもらった方もいるだろう
▼元日の地震で大きな被害を受けた能登地方を、記録的豪雨が襲った。亡くなった人、安否の分からなくなっている人がいる。各地で集落が孤立し、ようやく入居できたのに浸水してしまった仮設住宅もある
▼心が折れそうだ―。現地から声が聞こえてくる。途方に暮れる方々にかける言葉が見つからない。せめて、ひとりぼっちじゃないことを心に留め置いて、困難を乗り越えてほしい。