芥川賞を今年1月に受賞した作家の鈴木結生(ゆうい)さん(24)=郡山市出身=が8日、福島県庁を訪れ、内堀雅雄知事と懇談した。鈴木さんが「故郷」と話す本県への思いや受賞の感想などを語った。
鈴木さんのファンという内堀知事の希望により実現した。受賞作「ゲーテはすべてを言った」について、内堀知事は「この一冊を書くのに一体どれだけの本を読み込んだのかと驚かされた」と感想を伝えた。鈴木さんは「読書が好きな人に刺さればいいなと思って書いたが、賞を取ったことで普段本を読まない人にも作品を手に取ってもらえる貴重な体験ができた」と話した。懇談の最後に内堀知事が鈴木さんにサインを求め「楽しみながら作家活動に取り組んでください」と激励した。
鈴木さんは1歳から小学5年生までを郡山市で過ごした。現在は福岡市在住で、西南学院大の大学院生として英文学を研究中。小説と修士論文の執筆で多忙な日々を送る。第35回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の芸術文化賞を受賞した。
「表現の仕方、模索したい」
鈴木さんは内堀知事との懇談で、東日本大震災の経験を生かして活動に励んでいることなどを強調した。
―鈴木さんの受賞に県民も大喜びした。「10年間郡山にいて、自分としては故郷という感覚があったが、長く離れていてあまり帰ってくることもなかったので、そういう中で受賞を喜んでもらえて非常にありがたかった」
―震災は人生の中で重い一ページになっているのか。
「一番大事なところだったと思う。震災の前から本を書いたり読むことが好きだったので、あの経験がなくとも何かを表現していたとは思うが、全く違った歩みになっていたはず」
―作品の登場人物の名前が難しいのはなぜか。
「何か意味のある名前じゃないと使いたくないと思っている。分かりやすい名前を付けたつもりでも、読者からすると分かりにくいと言われることもある。新人作家なので、読者とのコミュニケーションを取りながら自分の表現の仕方を模索していきたい」