相馬農高が11日に開幕する秋季東北地区高校野球県大会に38年ぶりに単独で出場する。夏まで4人しかいなかった部員は、生徒たちへの呼びかけが実り13人になった。経験者はたった3人だが、部員同士が教え合いながら大会に向けて練習に打ち込んでいる。
同校は2022年の夏の大会こそ単独出場したが、部員不足で同じ浜通り地区の高校を中心に長く連合チームを組む状況が続いていた。秋季大会には支部予選で敗退した8年前以来、単独で出場できていなかった。
今夏の福島大会は原町高との連合チームで出場したが、その原町高が秋季大会は単独出場することが決定。ほかの学校と連合を組むことも考えたが、2年生部員で双子の佐々木健成さん、康成さんらが一生懸命に練習に打ち込む姿を見ていた鵜沼良延監督(34)が、生徒と共に単独出場を目指すことを決意した。
「野球はチームでできる。点数はみんなで頑張って取った点」。メンバーで唯一中学での野球経験がある三塁手の金谷悠生さん(1年)らが同級生に野球の楽しさを伝えて回ると、テニス部やバドミントン部、音楽部、柔道部から助っ人が続々と集まってきた。「秋の大会では1勝したい」と金谷さん。初心者に助言をしながら練習を重ねる。
右翼手安藤智春さん(2年)はテニス部から転部した。幼い頃から祖父と野球観戦するなど野球に興味はあったものの踏み出せずにいたが、テニス部のすぐ隣の練習場で少ない人数ながら練習に励む野球部の姿を見て、挑戦したい気持ちが強くなった。入部して初めてバットの芯に球が当たり、遠くに飛ばせると気持ち良かった。「野球は楽しい。もっとうまくなりたい」と笑顔を見せる。
相馬農高は12日の初戦で只見高と対戦する。鵜沼監督は「単独で出られることを誇りに戦ってほしい」と選手たちを鼓舞した。