本県には活火山が五つあり、栃木県の那須岳にも近接するなど、火山への備えが欠かせない。来年を目標とする火山シェルターの運用に合わせ、県内の火山防災のレベルを底上げすることが重要だ。
県が、吾妻山に火山シェルターを設置する関係事業費を9月補正予算案に計上した。浄土平の駐車場に3基を設け、噴火時に約200人が避難できるようにする。
火山シェルターは、多くの死者や行方不明者が出た2014年9月の御嶽山(長野、岐阜県)の噴火を受け、全国の活火山で設置が進んでいる。本県では、東北の活火山の中でも活動が活発で、利用者が軽装で火口周辺に近づくことができる吾妻山に優先して設置する方向で議論してきた。
御嶽山の噴火は、登山シーズンに重なったことで大きな被害が出た。吾妻山も多くの人が訪れる観光地になっている。県は十分な強度を持ったシェルターを設置するとともに、突発的な噴火の際には必ず利用してもらうよう啓発に努め、噴石などから登山者の命を守る要として役立ててほしい。
県内の活火山のうち、噴火警戒レベルを運用し常時観測しているのは吾妻山、安達太良山、磐梯山となっている。安達太良山は1900年に水蒸気爆発し、沼ノ平火口にあった硫黄精錬所が吹き飛ばされて72人が亡くなった。磐梯山では1888年、水蒸気爆発によって小磐梯の北側が崩壊し、死者461人の被害が出た。
噴火警戒レベルは5段階に分かれ、火山活動が静穏の1でも「活火山であることに留意」とされている。「火口周辺規制」は火口近くに噴石が飛び、「入山規制」はより広い範囲で火砕流などが発生する可能性がある。県と地元自治体には、災害がいつ起きても不思議でないことを注意喚起しながら、安達太良山と磐梯山へのシェルター設置を急ぐよう求めたい。
火山による災害は、有毒ガス発生など多岐に及ぶ。中でも、広範囲に影響が出るとされるのは融雪型火山泥流だ。溶岩が噴出したり、火砕流が発生したりして雪が溶け、土砂などと高速で流れ下る。吾妻山で大規模な融雪型火山泥流が発生した場合、福島市の市街地でも場所によっては2メートル以上浸水することが想定されている。
県や地元自治体の防災担当者によると、火山への防災意識は地震や洪水に比べ低い傾向にあるという。日頃から周囲の活火山の情報を気にかけながら、自治体が発行している火山防災マップなどに目を通し、自宅がある場所のリスクを確認しておくことが必要だ。