教員と生徒、保護者、地域の信頼関係がなければ、学校教育はその役割を全うし得ない。県教委は犯罪などの続発により、教職員に厳しい目が向けられていることを重く受け止め、信頼を取り戻していかなければならない。
清陵情報高教諭の男が、7月に郡山市のデパートの女子トイレに侵入した建造物侵入の疑いで郡山署に逮捕された。捜査関係者によると、男は「盗撮目的だった」と供述し、容疑を認めているという。同校は逮捕を受けて、校内の点検を行ったが、カメラなどは確認されなかったとしている。
本年度の本県教員の逮捕は初めて。ただ、県外では教員らが女児を盗撮し画像を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有した事件で複数の教員が逮捕されるなど、教員のわいせつ事犯が相次ぎ、子どもや保護者の教員に対する不信は強まっている。
本県では2月、県立高校の講師が18歳未満の少女にわいせつな行為をしたとして不同意性交の罪で起訴される事件があった。今回の逮捕容疑が事実で盗撮の目的があったとすれば、本県の教員のモラル低下は極めて深刻だ。
教員にほかの職種よりも高潔さが求められるのは、将来を担う子どもたちの模範とならなければならないからで、罪を犯すような教員は論外だ。周囲にいた教職員についても、危うい教員を見過ごしてしまうようでは、子どもたちを観察、指導する適性が疑われる。今回のような事件が起きてしまったことは、本県の教職員全体の問題だ。
県教委は昨年度、懲戒処分が27件に上ったことから、「教職員不祥事根絶プロジェクト」と銘打ち、研修の強化や、教育長などと現場の教職員との面談を行っている。ただ、本年度に入ってからも体罰や市町村から交付された激励金の不適正処理、車検切れの車の運転で3件の懲戒処分があった。
県教委は公金処理の厳格化など規範強化を進めており、その過程で新たな不祥事が見つかることも考えられる。早期にうみを出し切り、不祥事を生みにくい仕組みに変えていくことが大切だ。
根絶プロジェクトの柱である、県教委など司令塔の役割を担う部門と学校現場の対話は、教職員に教育者として自覚と自制を促す上で必要な取り組みだろう。しかし、教職員とはいえ性善説に基づいた取り組みだけで不祥事は根絶できまい。子どもを教え導く立場を踏み外した時の代償は極めて大きい。それを繰り返し確認する機会を設ける必要がある。