合意内容が完全に履行され、一刻も早い人道危機の解消につながるよう、国際社会全体で厳しく監視しなければならない。
イスラエルとイスラム組織ハマスが、パレスチナ自治区ガザ戦闘を巡る和平計画の「第1段階」で合意した。計画を提案したトランプ米大統領は、ハマスが全ての人質を解放し、イスラエル軍がガザの一部から撤収するとしている。
イスラエルは閣議で第1段階の合意を承認した。ネタニヤフ首相は声明で、全ての人質が解放されるとして「イスラエル国家にとっての勝利だ」と主張した。一方、ハマス幹部は交流サイト(SNS)で「イスラエルへの抵抗の素晴らしい成果だ」と強調している。
和平計画によると、イスラエルが正式に合意を受け入れた後、ハマスが72時間以内に人質全員を解放する。戦後統治にハマスの関与を認めず、イスラエルはガザを占領、併合しないとしている。
しかし合意発表後、ガザでは空爆が起きている。今年1月にも停戦の発効後、ハマスが人質を解放し、イスラエルは拘束下のパレスチナ人の釈放を進めたが、イスラエル軍が3月に攻撃を再開したことで事態が悪化した。同じ愚行は決して許されない。イスラエルは人質の迅速な解放のため、攻撃を直ちにやめ、計画の着実な履行につなげなければならない。
ちょうど2年前、ハマスが仕掛けたイスラエルへの奇襲をきっかけに戦闘が始まった。ガザ側の死者は6万7千人を超え、ガザは食料不足による飢餓が極めて深刻で人道危機に直面している。
今回の合意でようやく停戦が現実味を帯びてきたが、ハマスの武装解除やガザの戦後統治、イスラエル軍の完全撤退の時期などは棚上げにされており、今後の「第2段階」の交渉は予断を許さない。ハマスが最後の交渉カードである人質を手放した後、イスラエル軍が再攻撃するとの懸念もある。
カタールやエジプトなどと連携し、仲介役を担ってきた米国の役割がより重要になる。今回の合意を「歴史的偉業」と誇るトランプ氏は、恒久的な停戦の実現に尽くしてもらいたい。
戦闘でガザは壊滅的な状況にある。合意には支援物資の搬入拡大が盛り込まれており、今後、国連機関などを中心に食料不足の解消や医療体制の構築など、人道支援の強化を急ぐべきだ。
日本はパレスチナの国家承認を見送り、国内外から批判を受けたばかりだ。2国家共存の実現に向け、人道支援や恒久和平の実現に積極的に関わる必要がある。