「障害のある娘の細い足にぴったりの靴下を作りたい」。福島県いわき市の木田綾子さん(51)は5年をかけてその夢を実現し、自分と同じように細い靴下を求める人に届けるため15日に発売する。「障害者はぶかぶかでもしょうがないという風潮を変えたい。障害者も体に合った服を必要としていることを多くの人に知ってもらえればと思う」と訴える。
木田さんの次女帆乃花(ほのか)さん(9)は生まれてすぐ「マーシャル・スミス症候群」と診断された。骨が細く、もろくなり呼吸器系にも影響が出る極めて希少な病気で、木田さんが知る限りでは同じ病気の患者は国内に3人しかいないという。
帆乃花さんは体が小さく、足は足首の周囲が11センチ、ふくらはぎの周囲が13センチと細い。これまでは比較的サイズが近い市販の靴下をはかせていたが、どれも大きすぎてすぐに脱げてしまったり、自分で両足をこすり合わせて脱いでしまったりした。冬は知らないうちに、足がキンキンに冷えてしまうこともあった。
それなら作るしかないと、木田さんは5年前、メーカーに連絡を取り始めた。「そんなに細いサイズは難しい」と何度も断られたが、オリジナル靴下を手がける東京都の会社が一定のまとまった数を作ることを条件に製作に応じ、今年5月に完成した。「完成した靴下を娘にはかせた時は涙が出るほどうれしかった。介護負担も少なくなった」と語る。
木田さんはこの病気だけでなく、心身の発達に影響が出るなどの同じような悩みを抱える人向けに靴下の販売を思い立った。足のサイズに合わせ15~17センチと18~20センチの2種類があり、それぞれ300足程度の在庫がある。購入者にはアンケートに答えてもらい、製品の改良につなげたい考えだ。
「障害があるからこそ、衣類は体に合ったものを着せたい」。木田さんはそう考えるが、帆乃花さんの服を探す際はデザインが選べないのはもちろんのこと、サイズや形の面でも望む物を見つけるのに相当苦労するのが現状だという。靴下の販売について木田さんは「このような靴下を必要としている人がいると、アパレル業界の方々に考えてもらうきっかけにもしてもらいたい」と問題提起する。
靴下は3足セットで2800円。問い合わせは木田さん(電話090・5359・0684)へ。