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【新まち食堂物語】洋食店だいよし・塙町 こだわりの味、守り抜く

2025/11/09 10:00

  • 動画付き
店を切り盛りする栄二さん(左)と妻幸子さん。半世紀以上にわたり変わらない味を提供している
人気のハンバーグ定食

 塙町のJR水郡線磐城塙駅近くにある「洋食店だいよし」。店主の大滝栄二さん(80)と妻幸子さん(79)が1967年に店を構え、58年にわたって変わらない味を届けている。昼食時になると、多くの人がカツカレーやハンバーグなどの料理を楽しんでいる。

 「メニュー一品一品にこだわりがある」と栄二さん。とんかつやエビフライなどには自家製のパン粉を使っており、口当たりが良く、さくさくとした食感が楽しめる。ハンバーグは牛肉と豚肉の合いびき肉を使用。分量は秘伝のもので、ナイフを入れた時にあふれ出る肉汁とやわらかな食感にご飯が進む。

 調味料、調合工夫 

 味へのこだわりは他にもある。丼物に使うたれやカレー、ハンバーグのデミグラスソースなど、味の決め手になる物は自家製にこだわる。「変わらない味になるように工夫している。時代とともに使う調味料が変わるが、そのたびに同じ味になるように調合を変えている」と栄二さん。たれがなくなりそうになると、一度に数日分を仕込む。重労働だが、それが味の決め手になるという。

 栄二さんが料理人の道を志したのは、母親から勧められたことがきっかけだ。「自分もおいしい物が食べられると思った」と当時を笑いながら振り返る。19歳の時に埼玉県のレストランで修業を始めて以降、郡山市や東京都を中心とした関東地方のさまざまなレストランで経験を積んだ。「郡山で修業したメニューの中ではカレーが印象的で、それぞれの店で看板商品といえる料理を学ぶことができた」と振り返る。それぞれの店での経験を生かし、良いところを合わせたのが、後のメニューになった。

 58年の店の歴史には、苦難もあった。幸子さんと一緒に1店舗を任された経験があり、こつこつと資金をため、22歳の時に地元の塙町で開店した。当時は洋食を求める客が少なく、客の要望に合わせてラーメンやうどんも提供。徐々に洋食を求める人が増え始め、今ではなくてはならない味になっている。

 望まれ営業再開

 最大の危機は2年前。一緒に店を支えてきた幸子さんが心臓の病気で入院することになった。6時間近くかかった手術は成功したが、長期の入院を余儀なくされた。「これを機に店を辞めようと思った」と2人は振り返る。実際に店で使っていた食器や道具などを処分し、閉店すると周囲の人々に伝えた。それでも「何とか続けてもらいたい」という声が多く、半年後に店を再オープン。宴会などはやめて、昼の時間帯のみの営業で再出発した。常連客から「やってもらって良かった」という声を聞いた時には、涙が出るほどうれしかったという。

 「かつて家族で来ていた子どもが、今では子どもを連れて店に来てくれる。長年やっていると、こういうつながりが本当にうれしい」と笑顔を見せる栄二さん。「仕事が楽しいし、できるだけ続けていきたい」。半世紀以上変わらない味を、これからも2人で作り続けていくつもりだ。

お店データ

■住所 塙町塙字栄町39の10

■電話 0247・43・0359

■営業時間 午前11時~午後2時

■定休日 水、日曜日

■主なメニュー
 ▽カツカレー=1100円
 ▽ハンバーグ定食=1450円
 ▽ポークソテー定食=1450円
 ▽ナポリタン(サラダ付き)=1100円
 ▽カツ丼=1000円

 三味線も半世紀超 

 大滝栄二さんの趣味は民謡と三味線。どちらも50年以上続けており、三味線は地域の民謡教室で長年伴奏者を務めている。栄二さんは「料理も三味線も人を感動させたいという思いは一緒だね」と笑顔で語りながら、得意曲の「津軽じょんがら節」を店内に響かせた。

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