秋の行楽シーズンに合わせ、福島県内各地の道の駅が利用客でにぎわいを見せている。行楽中のドライバーが憩いの場として立ち寄るだけでなく、特色ある施設を目当てに利用客が訪れる道の駅も。来場者数が好調な背景には観光客に加え、地元住民も呼び込む仕掛けがある。被災地や過疎地では道の駅が住民生活を支える社会インフラとしての役割も増している。
本県が誇る「常磐もの」の魚介類が並ぶいわき市小名浜の「道の駅いわき・ら・ら・ミュウ」。9月12日に道の駅としてグランドオープンした施設は、連日多くの観光客らが訪れる。
施設を運営する市観光物産センターによると、施設の入館者数、売り上げは前年比約1.2~1.4倍と好調だ。レストラン「あじフライの右京」社長の真弓和恵さん(52)は「道の駅になったことで、交流サイト(SNS)でも目に触れる機会が増えたのかもしれない」と推察する。
2022年4月にオープンした福島市の「道の駅ふくしま」は、今年10月に来館者が600万人を超えた。東北中央道福島大笹生インターチェンジから近く、飯坂温泉など福島三名湯にも行きやすい立地が人気を支える。湯川村にある「道の駅あいづ湯川・会津坂下」は新鮮な農産物に加え土産物の新商品開発などが奏功し、昨年度は14年のオープン以来最高となる7億5606万円を売り上げた。
道の駅の売り上げを支えるのは観光客だけにとどまらない。「あいづ」は、周辺に大きな商業施設がなく、地域住民の日常の買い物の場となっている一面がある。駅長の土田昌孝さん(54)によると、客層の約6割は地元の人という。「いわき」では直売店「いわきの物産 銘品プラザ」の売り場面積を1.5倍にして地元農産品の売り場を拡張。これまで「伸びしろ」とされてきた平日を中心に地元客が以前より多く訪れるようになった。
「面白い取り組みを見つけるスタンスを大切にしたい」と土田さん。それぞれの道の駅は、利用者にリピーターになってもらうために”攻めの姿勢”での運営に気を配る。
来夏開業の石川、差別化目指す
石川町は全国で道の駅の運営実績がある「TTCグループ」を運営事業者に選び、来年夏に道の駅を開業させる予定。民間の知見を生かして地場産品を活用した商品開発を進めるほか、近隣で珍しい設備を導入して差別化を図る構想だ。
首藤剛太郎町長は「にぎわいを生み出すためには、ほかと差別化された強い施設にすることが重要だ。町の魅力を幅広く知ってもらう展示場のような施設にしたい」と青写真を描く。
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道の駅 全国の国道などの幹線道路沿いにあり〈1〉道路利用者が24時間無料で利用できる駐車場やトイレといった「休憩機能」〈2〉道路の状況や地域の観光、歴史文化に関する情報を伝える「情報発信機能」〈3〉農産物直売所や食堂、温泉、レクリエーション施設など地域の活性化につながる「地域連携機能」―の三つを併せ持つ施設を国土交通省が登録。県内には36カ所ある。
