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【11月13日付社説】デフリンピック/障害への理解深める契機に

2025/11/13 08:00

 耳が不自由な人の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が15日に開幕する。今回が25回目で、日本では初開催となる。

 今大会は21競技を実施し、70~80カ国・地域から約3千人の選手が参加する予定だ。このうちサッカーはJヴィレッジ(楢葉町、広野町)が会場で、開幕に先立ち、14日に競技が始まる。

 「デフ」は英語で耳が聞こえないことを意味する。デフリンピックは1924年に開かれた大会が第1回とされ、身体、視覚、知的障害の選手が参加するパラリンピックより歴史は古い。

 4年前の東京パラリンピックは障害者スポーツの振興や認知度の向上につながった。厚生労働省によると、障害者手帳を持つ聴覚障害者は国内に約31万人いる。大会を通じて、聴覚障害への理解が深まることを期待したい。

 本県で開催されるデフサッカーは、通常のサッカーと同じ11人制でルールも基本的に同じだ。選手は補聴器を外すことが義務付けられており、声や足音、ボールの打球音など、音から情報を得ることが難しい。「音のないサッカー」とも呼ばれている。

 選手やコーチは、手話やアイコンタクトでコミュニケーションを取ってプレーする。その速度や選手間の連係などは、耳の不自由さなどを感じさせない。

 サッカーの日本代表はきのうまで県内で直前合宿を行った。男女とも優勝候補で、男子は14日に1次リーグA組で英国と、女子は15日に米国と初戦を迎える。

 デフスポーツの観戦は声援や拍手に加え、手話や身ぶりで応援するのも醍醐味(だいごみ)だ。チーム、選手へのメッセージを記したボードを掲げるなどして、思いを伝えることで選手を後押しできる。

 今大会はすべての競技が観戦無料となっている。間近で観戦できる貴重な機会といえる。会場を訪れ、最高峰の舞台で懸命にプレーする選手にエールを送りたい。

 日本代表は約230人で、このうち県勢はバスケットボール男子に越前由喜(郡山支援学校教諭)と、山田洋貴(いわき市出身)の両選手、柔道男子73キロ級に蒲生和麻選手(日大東北高卒)が選ばれた。これまでの練習の成果を思う存分に発揮し、メダル獲得を果たしてほしい。

 観戦などで多くの聴覚障害者が本県を訪れ、駅などの公共施設や飲食店などを利用するだろう。たとえ手話ができなくとも、表情や動作、口の動きなどで気持ちを伝えることはできる。積極的に交流するなどして温かく迎えたい。

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