不正融資で捻出した資金を反社会的勢力に提供していたいわき信用組合(いわき市)は14日、業務改善計画書を金融庁に提出した。計画書には、反社会的勢力との一切の取引を解消し、今後の取引防止態勢を強化する内容を盛り込んだ。また、調査で反社会的勢力と認定された法人への融資に関わったとして常勤理事が同日付で辞任したことを明らかにした。
一連の不正を受けた業務改善計画書の提出は2度目。計画書によると、反社会的勢力との取引で回収が困難になっている債権を預金保険機構が買い取る「特定回収困難債権買取制度」を活用して関係解消を図る。信組は2019~24年の間、反社会的勢力リストに掲載されている人物から紹介を受けて9件28億5850万円の融資を行ったことが明らかになっており、機構の買い取り額は相当額に上る見込みだ。
取引の未然防止には、外部のデータベースを導入して従来の反社会的勢力のチェックリストを厳格化。警察OBを顧問として登用することも盛り込んだ。
辞任した常勤理事は職員時代、旧役員の指示で問題の融資に関わった。融資先は当時、反社会的勢力と認定されていなかったがその後の調査で判明、理事が辞任を申し出た。
このほか計画書では、現経営陣の経営責任を明確化するとして理事長の役員報酬を3カ月50%減額、ほか役員4人を3カ月10%減額の懲戒処分とした。別の常勤理事は職員時代、不適切な融資に関わっていた事実が認められ、さらに3カ月30%減額の懲戒処分にした。
11月17日から1カ月間、新規顧客に対する融資業務を停止し、この期間に全役職員約190人が5日間ずつ、業務から離れ法令順守の研修を受ける。一連の不正では犯罪収益移転防止法に抵触するケースが複数あったため、必要な取り組みをまとめたマニュアルを導入。旧経営陣が金融庁などの調査に対して行った虚偽答弁や調査妨害の再発防止に向け意識の改善も図る。
旧経営陣の責任については背任や有印私文書偽造・同行使、証拠隠滅に該当する可能性があると指摘。刑事告訴と民事の損害賠償請求は年内に行う方針。今後も内部調査を継続する。一連の不当要求に関わった反社会的勢力に対しても刑事、民事両面で責任を追及していく。一連の不正融資で、大口融資先への迂回(うかい)融資や無断借名融資で流出した資金は返還請求を行う。
経営強化計画も提出
信組は東日本大震災の特例として金融機能強化法に基づき公的資金200億円を受けており、同法に基づく経営強化計画も不正融資の再発防止などに向けて見直しを行い、金融庁に提出した。公的資金の早期返済に向けて「返済財源を着実に積み上げる」とした。
