郡山市西部の逢瀬町、湖南町の境にある標高876メートルの御霊櫃(ごれいびつ)峠。晴れていれば西に猪苗代湖、東に郡山市街を望めるぜいたくな絶景スポットだ。
難読な名称の由来は、平安時代にさかのぼる。この地を治め、全国の御霊神社に祭られている鎌倉権五郎景政の伝説が基とされている。明治時代の半ばまでは中通りと会津を結ぶ重要な交通の要衝で、戊辰戦争の際には会津藩と仙台藩の交戦場にもなった。
奥羽山脈の分水嶺(れい)であり、難所としても知られる。郡山市内の逢瀬町側、猪苗代湖のある湖南町側のどちらからも行くことができるが、道幅は狭く、すれ違いが難しい箇所もある。
幾つものカーブを経て山頂に至れば、眼下に風光明媚(めいび)な景色が広がる。頂上付近には駐車場もある。秋には美しい紅葉が楽しめるほか、5月下旬から6月上旬にかけてはヤマツツジの花が咲き、辺りは紅色に染まる。
三春町出身の登山家、故田部井淳子さんの生涯をモデルにした公開中の映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」では、ロケ地の一つとして登場する。主演の吉永小百合さんは本紙のインタビューで「あんなに景色が美しく、気持ちが良かったことはない」と絶賛している。ファンが作品の舞台を巡る「聖地巡礼」の場所としても注目が集まりそうだ。
