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【12月10日付社説】後発地震の注意情報/迅速な避難へ万全の態勢を

2025/12/10 08:10

 気象庁が、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表した。日本海溝・千島海溝沿いで大規模な地震が発生する可能性が平常時より高まった時に出されるもので、2022年12月の運用開始から初の発表だ。自分や家族の命を守るすべを考えたい。

 注意情報は、海溝沿いの巨大地震の想定震源域で、精査した地震の規模を示すマグニチュード(M)が7以上の場合に出される。一定の規模の地震が、後のより大きな地震の前兆であることを警戒した対応だ。今回は8日深夜の青森県東方沖の地震が該当した。今後1週間程度は、日常生活を続けながら、迅速に避難できる態勢を取ることが求められる。

 気象庁は、地震発生を完全に予測することはできないため「可能性が平常時と比べ相対的に高まっている」などと表現する。ただ、11年の東日本大震災を振り返れば、M7・3の地震の約2日後に、本震であるM9・0の巨大地震が発生した。油断することなく、地震やそれに伴う津波などの災害に備えておくことが重要だ。

 国は、日本海溝沿いで最大規模の地震が発生した場合の被害想定を行っている。死者数や経済的被害額などは、暖房器具を使う機会が増え、積雪の避難への影響も懸念される冬季が最も多い。本県で特に警戒が必要な地域は、浜通り沿岸部のいわき、大熊、新地、相馬、富岡、浪江、楢葉、広野、双葉、南相馬の10市町だ。

 10市町では昼夜を問わず、津波警報が出されたときには速やかに避難できるよう、自宅や会社、学校などから高台などに移動する経路を確認しておきたい。冬季の災害では、避難中や避難所などで低体温症にならないよう防寒具やカイロなどの準備も欠かせない。非常用持ち出し袋に事前に入れておくことが、命を守る備えになる。

 沿岸部以外の地区でも、対策が必要だ。強い地震で冷蔵庫や本棚が倒れてけがをしないよう、金具などで壁に固定しておくことを徹底したい。水や非常食の多めの備蓄に加え、簡易トイレや懐中電灯なども備えておくことが求められる。火を使っているときに地震になったら、揺れが収まった後に落ち着いて消すことも心がけたい。

 災害時には、社会的な不安に乗じて、出所が不明な偽情報や誤情報が交流サイト(SNS)などで流れることが確認されている。正しい情報を見極め、冷静に行動することが大切だ。たとえ誰かに知らせたいという善意であっても、怪しい情報をむやみに拡散することは避けなければならない。

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