放射線に「良い悪い」ない

 

 放射線被ばくによる身体への影響は、浴びたか浴びていないか? ではなく、放射線をどれくらい浴びたか? という「量」の問題です。どの程度の「量」を浴びると良くないのか。この問いに答えるために、これまでさまざまな調査が行われてきました。

 広島・長崎の原爆投下後に行われた健康影響調査もその一つですが、その他にも数多くの調査があります。例えば、〈1〉医療上、検査や処置・治療に伴う被ばくによるもの〈2〉環境中に存在する主に天然の放射性物質から起こる被ばくによるもの〈3〉核関連施設や原子力発電所など職業上、業務を行う上での被ばくによるもの―といった具合です。

 それぞれの調査結果を比較し、お互いに矛盾がないか議論を重ね、最終的に放射線被ばく「量」と健康影響の関係が求められてきました。このようにさまざまな調査をまとめることができる理由は、健康影響にとって、どのような理由で放射線を浴びたか? は関係なく、結局はトータルの被ばく「量」が問題だからです。

 身体の細胞にとって、自然と人工どちらの放射性物質が危ないか? や、内部被ばくと外部被ばくのどちらが危ないか? という話はありません。科学的には良い放射線も悪い放射線もないのです。