医療被ばく肺がん増えず

 

 放射線被ばくによる身体への影響は、その被ばく「量」の問題です。どの程度の「量」浴びると良くないのか。この問いに答えるために、〈1〉医療被ばく〈2〉環境被ばく〈3〉職業被ばくなど、これまで、さまざまな状況下での調査が行われてきました。

 医療被ばくによるもののうち古い調査で有名なのは、肺結核治療の際に胸の検査で引き起こされた被ばくによる、乳がんや肺がんへの影響調査です。20世紀前半、肺結核の治療として人工的に気胸を作る(肺の一部をしぼませる)ことが一般的に行われていました。その際、胸に放射線を当て続け肺の状況を見る(=透視する)必要がありました。

 月に数回、数年間繰り返し処置が必要であったため、現在の胸のCT検査に換算すると100回以上、胸のレントゲンだと数1000回以上の撮影と同じぐらいの「量」の放射線を患者さんは浴びていました。医療で必要だったとはいえ、かなりの「量」です。

 そのような「量」浴びても、肺がんの増加は認められませんでした。しかし、若い方での乳がんは増えたことが報告されています。ただ、この結核の治療から導かれた被ばく「量」とがんによる死亡の関係は、原爆投下後の広島・長崎から導かれた被ばく「量」とがんによる死亡の関係にほとんど一致していたことが知られています。