天然と人工の違いはない

 

 われわれは元々日常生活において周りのさまざまな放射性物質から年間で2・1ミリシーベルトほどの放射線を浴びています。そしてその3分の1は、主に魚介類に含まれる天然の放射性物質(ポロニウムと言います)を摂取することによって起きています。

 被ばくによる身体への影響は、その「量」の問題です。天然のポロニウムだから安全、人工だから危険ではありません。このポロニウムは、日常生活の中で、われわれが1年間で受けるミリシーベルト前後では全く問題になりませんが、その千倍や1万倍の「量」を一度に被ばくすると、天然の放射性物質であっても致命傷となる場合もあります。

 実際に10年ほど前、大量のポロニウムによって要人が毒殺されるという事件がロンドンで発生しました。現場とその周辺も汚染され、長期間にわたるモニタリングが必要となりました。

 もちろん、現状の日常生活で、われわれが天然の放射性物質からそんな大量に被ばくすることはありません。突飛な例を紹介しましたが、あくまで人工と天然の差ではなく、被ばくによる身体への影響は、その「量」の問題です。