食事で十分なヨウ素摂取

 

 これまでの数多くの原子力事故の中で、チェルノブイリと福島での事故の二つがレベル7(=深刻な事故)とランク付けされています。この二つはレベルが同じとされてはいるものの、状況やその後の対策など異なる点が多くあります。例えば放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく量は、チェルノブイリ事故に比べ福島では2桁程度小さかったことが知られています。

 この二つの地域において、もう一つの甲状腺に関する大きな違いは、日常の食事による(放射性ではない)通常のヨウ素の摂取量が異なることです。通常のヨウ素は甲状腺ホルモンの原材料になります。また放射性ヨウ素が甲状腺に入ってくるのをブロックする役割があります。

 栄養素としての通常のヨウ素は、海産物に多く含まれます。例えば昆布のつくだ煮1~2グラムには大人が一日に必要な量が含まれています。昆布を多用する日本の食事で通常のヨウ素を取らないことは逆に難しいです。

 その一方で、チェルノブイリ周辺は内陸部でもあり、ヨウ素欠乏地域であったことが知られています。放射性ヨウ素がばらまかれたことに対し非常に不利な状況だったのです。その後、ヨウ素欠乏への対策としてヨウ素を添加した食塩が使われるようになります。