放射性物質、直接飲む治療

 

 現在の標準的な「がん」治療は、手術・抗がん剤(化学療法)・放射線治療の三つです。放射線による「がん」治療は、手術や抗がん剤と勝るとも劣らない選択肢の一つです。

 これまで、身体の外にある器械から、体内の病巣に向けて放射線を集中して当てる治療法について紹介してきました。それに対して、放射性物質を直接カプセルで飲んだり、注射で投与したり、小さな容器に密封された放射性物質を直接身体の中に入れたりして行う治療もあります。

 例えば、甲状腺が働き過ぎて、ホルモンが増え過ぎるバセドウ病や、甲状腺がんが身体のほかの場所に広がってしまうような場合、放射性ヨウ素を含むカプセルを飲んで治療をすることがあります。

 ヨウ素が身体の中に入ると、甲状腺組織に取り込まれます。つまり、カプセルを飲むと、放射性ヨウ素が治療したい部分に集まってくれるのです。働き過ぎている甲状腺や、甲状腺がんに取り込まれた放射性ヨウ素は、ベータ線を出し周辺の組織にダメージを与えることで治療が実現します。

 ちなみに、この治療で使われる放射性ヨウ素は、原発事故直後に周囲にばらまかれてしまった放射性物質の一つでもあります。半減期は8日なのでもう存在はしていません。