4月に全国初のカスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例を施行した東京都で、保護者らによる教員への過度なクレーム対策の検討が進められている。理不尽な要求で教員が心身に不調を来して退職に追い込まれるケースは後を絶たず、各地の自治体もマニュアルなどを策定。専門家は「学校が保護者や外部に向けて事前に対応方針を公開すれば未然防止につながる」と話す。
都教育委員会は4月、保護者対応の実態を探るため、都内の公立学校教職員を対象としたアンケートを実施。回答者の22%が保護者らから長時間拘束や暴言、脅迫などを受けた経験があるとした。影響を尋ねると、時間外労働の増加が最も多く、仕事の意欲低下、心身の不調が続いた。
関東地方の中学校に勤める30代の男性教員は、トラブル対応をきっかけに同僚が心を病むケースを目にしてきた。「保護者に遭遇するのが怖く、勤務校周辺を1人で歩くことができなくなった人もいた」と明かす。
5月には、東京都立川市立小学校で、男2人が学校に侵入、教員らを暴行してけがをさせる事件が起きた。