甲状腺被ばくの量が重要

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から「2020年レポート」として、最新の報告書が発表されました。今回の報告書の中で委員会は、事故後に甲状腺がんが多く見つかっていることについて、恐らく放射線被ばくとは関係がないであろうとコメントしています。

 その一方で、事故後の検査にて見つかっている甲状腺がんの患者さんの人数は、一般的に知られている甲状腺がんの患者さんの人数に比べて多いのだから、放射線被ばくによる影響があるのではないかという意見もあります。

 しかし、どんな病気であれ、実際に症状があり、その後病院を受診されて病気と診断される方の人数(一般的に知られている、病院などで見つかる患者さんの人数)と、症状のあるなしにかかわらず、住民の方全体に広く検査をする場合に見つかる患者さんの数は全く異なります。広く精密に検査を行えば、その分見つかる患者さんの数は大きく増えます。

 そのため、単純に患者さんの数を比較して増えたとか増えていないとだけ議論するのは間違いです。放射線被ばくに伴う影響の話をする場合には、放射線被ばくの量がどの程度であるのかが最も重要になります。

 今回の報告書でも言われている通り、推定される甲状腺の被ばく量は小さく、以前の報告に比べてより小さい値に修正されました。その放射線の量では甲状腺がんが増えるとは考え難いです。