将来への遺伝的影響ない

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から、最新の報告書が発表されました。甲状腺がんを含め、放射線被ばくに伴ったがん増加の可能性は低いと報告しています。

 では、遺伝的な影響についてはどうでしょうか。

 これまでここで何度かご紹介しているように、そもそも、人間では被ばくの影響が遺伝することは確認されていません。

 例えば、広島・長崎での原爆投下後、妊娠して生まれてきた世代(被爆2世)において、がんやその他の疾患の増加(遺伝的な影響)は認められていません。親が爆心地の近くで放射線を浴びた場合と浴びなかった場合で、染色体異常を持つ子どもの割合は変わりませんでした。

 また、数千人の小児期のがんの治療された方のお子さんと、治療された方の兄弟のお子さんの状態が比較され、染色体の異常や遺伝する病気、奇形の頻度は変わらなかったことも知られています。

 国連の報告書から推定される被ばく量は低く、現在のわれわれにすら放射線被ばくによる影響の可能性は低いと報告しています。このような知見から、今回の原発事故による将来への遺伝的な影響についても、それを危惧する状況には全くありません。