周囲の支援減、受診に遅れ

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から、最新の報告書が発表され、放射線被ばくに伴ったがん増加の可能性は低いと報告されました。その一方、精神的な影響や生活環境が変わることによる生活習慣病などの健康への影響は甚大でした。ただ、そのような一つ一つの病名だけが、健康への影響ではありません。

 健康への影響の中で重要なものの一つが、病院や医療へのアクセスの悪化でした。浜通りのとある地域では、原発事故後に乳がんの患者さんが、事故前と比べれば、病状がより進行した状態で病院に受診されていることが分かりました。症状があるにもかかわらず、病院への受診が、以前と比べて遅れていたということでした。

 詳しく見ると、その原因は、病院が閉まっていたからではなく、患者さんの周りからのサポートが減り、病院を受診するきっかけが失われていたことが原因でした。

 アクセスというと、単純に足がないとか、病院が閉まっている、またはない。といったことが思い浮かびますが、それだけではありません。私たちの健康は周辺からの支えによって成り立っています。このようなことは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう現在も同様に課題となっています。