県がまとめた報告書によると、本県への教育旅行を実施する学校数の推移は【グラフ】の通り。本県は豊かな自然や歴史を舞台とした体験学習の場を提供しており、震災、原発事故前は「教育旅行先進県」として評価され、2006(平成18)年度以降は8000校前後が教育旅行を行っていた。震災、原発事故により11年度は約2000校まで落ち込み、その後、13年度は約4700校と回復傾向にあるものの依然、厳しい状況が続いている。
地域別に見ると、県外では元々近隣県と関東地方からの教育旅行の割合が高く、この地域の回復が鍵を握る。一方、県によると、激減していた九州地方からの教育旅行は、キャラバン活動などを通じて本県の現状が理解され始め、スキー修学旅行を中心に増えている。
「2〜3年後見据えて」
震災、原発事故前は本県への教育旅行が盛んだった関東地方。県は、教育旅行実施をめぐる補助事業を関東地方の学校側に周知するなどして回復を目指している。
だが、長期的視野で取り組まなければ、成果は期待できないのが現状。本県が教育旅行の回復に向け取り組みを進めていることに理解を示した上で、千葉市のある教員は「中学校では3年生が修学旅行に行くが、旅行2年前の夏までにはJRに申請を出し、1年前にはホテルに申し込む必要がある」と指摘。「福島県を応援したいという気持ちがあっても、その年にすぐ対応するというのは難しい。教育旅行の回復に向けては、2、3年後を見据えた取り組みが必要だろう」と事情を説明した。
県バス代補助に問い合わせ262件
教育旅行の回復を目指す県は本年度新たに、県内に宿泊する教育旅行を実施する県外の学校に対し、バス代を補助している。4、5月の2カ月間で、県には学校や旅行会社などから、補助について262件の問い合わせが寄せられた。うち、新規は76件。宮城や茨城、栃木など近隣県や首都圏からが多いという。
バス代補助の対象は、県内で宿泊し、修学旅行や体験学習を実施する県外の小、中学校、高校。震災後初めて本県を訪れる新規校の上限はバス1台当たり5万円、1校当たり20万円(バス4台分)。継続して本県を訪れている学校の上限はバス1台当たり2万5000円、1校当たり10万円(同)。継続校は、被災地視察など県が推進する教育素材を行程に取り入れることが条件となっている。県の担当者は「観光全体に比べれば、教育旅行の割合は低いかもしれないが、子どもたちに福島を実際に見てもらうことが大切。大人になった時にもう一度福島に来てもらえるよう、長い目で対策を考え、将来につなげたい」としている。