避難指示が5日に解除される楢葉町。町の医療を担う県立診療所の開院は来年2月を予定しているが、町内の内科や歯科などは閉院したままだ。
住民らは震災前、町内の診療所か近隣の広野町、いわき市の病院に通っていたというが、解除後もほとんど状況は変わらない。現状では、町内に薬局がないため、薬を簡単に手に入れることもできない。
楢葉町からいわき市へ避難している石沢輝之さん(75)は準備宿泊をしていない。「早く古里に戻りたいが、(健康面で)何かあったらと考えると町内に病院がないのは不安」と話す。石沢さんのように故郷の町に帰りたいが、医療や介護の面で不安が残る人は少なくなく、町への帰還を足踏みする要因の一つとなっている。
解除後、町内で暮らし始める住民にとって、避難先で身近に感じていた医療や介護を気軽に受けられなくなることには、心理的な不安が大きい。特に、高齢者や小さな子どもを持つ家庭など、万一の救急医療を要する場合や通院のしやすさなどを考慮すると、医療や介護の整備が不十分な町に帰還を促すのは簡単なことではない。