「地域資源と接する人を減らさない仕組みづくりが大切」と話す小松特任准教授 |
農業経営学、農業経済学を専門とする福島大うつくしまふくしま未来支援センターの小松知未特任准教授(32)に、本県農業の現状と対策を聞いた。
--県産農産物の風評被害の現状は。
「本県は十分に放射性物質対策が行われているが、全国に伝わっていないのが実情だ。費用負担と制度の問題もあり、来年以降、検査体制などの維持が難しい。全国で本県の安全対策の認識がないまま検査体制などが縮小されると、大きなマイナスイメージとなってしまうことが懸念される」
--効果的な対策は。
「リスクの低いところから対策を卒業していくイメージ。検査で一定の年数、(放射性物質が)不検出だった地域から解除するといったように、目標をクリアしたら現場の作業負担を減らす工程を明確にすることだ。負担軽減されるまでの間、国民に本県の安全対策を分かってもらうよう戦略的に取り組むことが必要」
--帰還できるようになった地域で営農再開する場合の農地の復旧状況は。
「農地の復旧が遅れている。津波対策、除染が一巡するなどインフラ対策が終わっても、営農再開されていない地域は水田を中心に広がっている。生産者は再開を自粛している場合と離農した場合があるが、再開できる人が少ない地域では、原状回復を目指すのかどうか、実情に合わせて対応することが必要だろう」
--本県農業の今後の在り方は。
「農業経営への支援だけでなく、自給的な営農も含め、地域資源と接する人を減らさない仕組みづくりが大切。輸出などの目標を立てる前に地元の消費者にどう応援してもらえるかも重要だ。帰還したばかりの人は地元住民だけでなく外部の人材と協力して取り組むことが有効だろう」
こまつ・ともみ 北大大学院農学院博士後期課程修了。福島大うつくしまふくしま未来支援センターで特任助教などを歴任し13年から現職。32歳。