「現場に精通した人、専門的な技術を持った作業員の確保が課題」。東京電力福島第1原発構内で、約30年前から2次下請けとして、原発の計器の調整業務などを請け負ってきた双葉郡のメンテナンス会社。原発事故後、いわき市に避難し、業務を続ける40代の男性経営者は、事故後の作業や人材の変化を語った。
同社や同社の下請け会社では、作業員の数に問題はないという。課題は質だ。「原発事故後は出稼ぎで来る人も多く、人の出入りが激しい。事故後は多核種除去設備(ALPS)など、新たに扱う設備も増えた。人数は十分でも、ある程度の経験を積んだ、力量を持った人が少ない」
事故前は13カ月に1回、原発の運転を停止し、定期点検していたというが「稼働や停止時だけ行う専門的な業務もある。事故後はその技術を学ばせる場がない」。長年、実際の作業を通し引き継いできた業務を現場で学ばせられない現状に、危機感を募らせる。
3月から、構内は大部分で防護服なしで作業でき、作業員の負担が軽減される。「廃炉までの道のりは長く、終わりが見えない。作業員の士気を維持し続けるのは難しい。古里を守るという意識を持った作業員を育てていくしかない」
「構内9割」防護服不要へ
事故当時は全面マスクに防護服が当たり前で、過酷な印象ばかりが描かれがちな福島第1原発の構内が大きく変化している。
原子炉建屋周辺や汚染水処理など汚染を伴う危険のある場所を除き、構内の約9割で防護服の着用が近く不要になる。すでに構内の約9割が全面マスク着用の対象外エリアに設定されており、作業環境の改善が進んでいる。
構内の放射線量低減や放射性物質の飛散防止には、表土にモルタルを吹き付けて放射性物質の飛散を防ぐ舗装(フェーシング)が大きく貢献している。移動型の放射線監視装置(モニタリングポスト)も各所に設置され、放射線量の「見える化」も図られている。
さらに、正門近くに昨年5月に開設された大型休憩所内の一角に1日、コンビニエンスストアが開業した。また今夏の開所を目指し、東電社員と協力企業の業務拠点となる新事務本館の建設が進められている。