いわき市で4月10、11の両日に初めて開かれた福島第1廃炉国際フォーラム(政府など主催)では、各国で行われている廃炉や放射性廃棄物の保管などに関する情報の共有が図られ、特に地域社会との対話の在り方は、政府や東京電力と県民の双方にとって重要な指摘となった。ただ県民の参加が少なかったことは課題といえるだろう。
「なぜここにもっと多くの被災者がいないのか」。震災と原発事故の体験を伝える「原発震災を語り継ぐ会」主宰の高村美春さん(南相馬市)はフォーラムの討論会に登壇し、疑問を投げ掛けた。県民の参加者数は、一般参加者約500人のうち約100人と2割にとどまった。
初日は比較的なじみやすいコミュニケーションをテーマに、最終日は溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなど専門的な課題をテーマにそれぞれ講演や討論会が行われたが、両日を通して感じたのは専門用語を並べ一方的に情報発信する原子力関係者の姿だった。
本県開催だからこそできる被災者と原子力関係者が互いに意見を交わす場面はほとんどなく、主催した経済産業省の高木陽介副大臣は閉幕後の会見で「住民と交流するセッションがあってもよかった」と次回への反省点を語った。
第1回のフォーラムという手探りの状況や周知不足があったのかもしれないが、廃炉をスムーズに進めるために地域住民の理解が不可欠という話は、政府や東電の関係者らが以前からよく口にしていることだ。
ならば第2回以降は、地域住民と原子力関係者が膝詰めで議論し、信頼関係を構築するフォーラムとするために、原子力関係者には今から分かりやすい言葉で住民と意見を交わす努力を求めたい。