子どもの頃、何を選ぶか迷ったときに「どれにしようかな、神様の言う通り...」と指を差しながら唱えた経験はないだろうか。そして、この続きは一体何と言っていたか...? 読者やラジオリスナーに記憶をたどってもらい、懐かしい「呪文」のバリエーションを調べた。今回は子どもの頃の遊びということで、当時住んでいた地域も聞いた(かっこ内の地名)。
出だしの「どれに」が「どちらに」だったり、「神様」が「天の神様」や「天神様」だったりする細かい違いはあるものの、前半はほぼ同じだった。「言う通り」で終了するシンプルな形もあるが、後半へ続く場合は、いずれも神様とは無関係な突拍子もないものが次々と登場する。
まず、県内で多く見られたのが「豆型」だ。各地に分布し、中でも最も多かった呪文は「赤豆、白豆、三度豆」だ。豆の種類は「黒豆」「赤豆、青豆、黄色豆」「天の豆」「うまい豆」という回答もあった。
特に福島市で広く使われているようで、「福島市民なら『赤豆、白豆、三度豆』は言っていたはず!」(同市のリスナー)といった「豆推し」の意見が複数あった。
この「三度豆」とは何なのか。広辞苑によると、1年に3度作られることからこう呼ばれ、本県や新潟県ではサヤエンドウのことを指すという。本県特有の呼称のようだ。県外出身者からは「三度豆」という回答は出なかったことから、これは本県独自の呪文といえそうだ。
「鉄砲型」も多数
そして、地域を問わず多数派を占めたのが「鉄砲型」だ。「鉄砲撃ってばんばんばん」というフレーズで、特に関東出身者の回答の多くがこれだった。また、豆と鉄砲の両方をつなげた、少し長めの「ハイブリッド型」も県内各地で散見された。
特徴的なものとして、言葉は違うけれどリズムが同じ「○○○の○型」がいくつもあった。例を挙げると「なのなのな」「あべべのべ」「あばばのば」「あのねのね」「おすすのす」「やややのや」「けっけっけのけ」などだ。
また、変わり種として「柿の種」(いわき市、浪江町、東京都)、「玉手箱」(東京都)、最後に自分のフルネームを言う(同)、「チャカポイ」(福島市)、「梅干し」(昭和村、喜多方市)、「おっとっとーのおっとっと」(田村市都路町)など、ユニークな回答が多数寄せられた。
もひとつおまけ
そして、さまざまな型の語尾に共通して付くことが多いフレーズが「もひとつおまけに」だ。代表的な例は、豆型なら「もひとつおまけにくださいな」、鉄砲型なら「もひとつおまけにばんばんばん」と続く。
ひそかに「実はこっちにしたい」と思っている方に決まるまで、即興で呪文がどんどん長くなっていく、という経験は多くの人に心当たりがあるのでは。そのための「おまけ」なのだろう。
「どれにしようかな」は昭和の子どもたちの言葉遊びだと思っていたが、調べてみると意外にも、若者はもちろん、今の子どもたちもほぼ同じ呪文を唱えていることが分かった。各地の「ローカルルール」で独自の変化を遂げながら、地域や世代を超えて伝えられているようだ。(佐藤香)