かつて双葉町に掲げられていた原子力を推進する広報看板のフレームと支柱の解体、撤去作業が31日、旧町役場の敷地で行われた。看板に書かれていた標語「原子力 明るい未来の エネルギー」を考案した大沼勇治さん(49)=茨城県古河市に避難=は「東京電力福島第1原発事故をなかったことにはできない。教訓を伝えるため、フレームもそのまま残してほしかった」と複雑な思いで作業を見守った。
大沼さんの標語は1987年に町の公募で優秀賞に選ばれ、町体育館前の目抜き通りに広報看板として設置された。原発事故に伴い、標語の文字盤は取り外され、現在は町内の東日本大震災・原子力災害伝承館に展示されている。
一方で文字盤が付けられていた全長約16メートルのフレームや支柱は2016年3月に町体育館前から撤去された後、経年劣化もあり、旧町役場庁舎の敷地に置かれていた。町は保管も検討したが、多額の管理費用がかかることなどから断念。旧庁舎の倉庫の解体に伴い、フレームや支柱も撤去されることになった。
手にしたカメラのシャッターを何度も切りながら、解体の様子を目に収めた大沼さんは「双葉の将来を思うからこそ、本物を残せず残念。町には次の世代に教訓を伝える取り組みを求めたい」と話した。