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【9月4日付社説】自民党の混乱/国民との溝が深まるだけだ

2025/09/04 08:05

 首相の曖昧な態度が政治を停滞させている。国益を損なう現状に一刻も早く終止符を打つべきだ。

 7月の参院選での大敗を受け、自民党が敗因などを検証した総括報告書を取りまとめた。政治とカネの問題や能登半島地震を巡る失言、内閣、政党支持率の低迷などの敗因を挙げ、「解党的出直しに取り組む」とした。

 首相は党の両院議員総会で「総裁である私の責任であり、そのことから逃れることはできない」と陳謝した。しかし総会後、記者団に自らの進退について「しかるべき時期に判断するが、まず国民の皆さん方がしてほしいと思っていることに全力を尽くす」と述べ、当面は続投する考えを示した。

 一方、森山裕幹事長ら党四役はそろって退任の意向を示し、進退の判断を首相に委ねた。参院選から1カ月以上が経過し、ようやく選挙を総括したにもかかわらず、トップの責任の取り方は曖昧なままだ。これでは挙党態勢を築けるはずもなく、政治空白は続く。いつまでも進退を決しない首相の態度は、あまりにも不誠実だ。

 衆参ともに少数与党に陥った厳しい状況で、解党的な出直しを図るというのであれば、誰がその改革を実行するかが重要になる。これまで政治とカネの問題などで指導力を発揮できなかった首相には到底困難であるのは明らかだ。

 報告書では、物価高対策として公約に掲げた現金給付が国民に響かなかったと振り返り、「国民との意識の乖離(かいり)を起こした」と総括した。野党が消費税減税などを唱えるなか、現金給付を公約に盛り込むように指示したのは、ほかでもない首相である。

 参院選以降、野党との政策協議は滞っている。首相は、物価高や日米関税交渉などの課題について「早急に解決するのが自民に課せられた使命だ」と語っている。ただ、野党とのパイプが太く、石破政権の屋台骨だった幹事長が辞任を表明している状況で、首相が野党との協議をまとめて政策を実行できるとは思えない。

 今後、首相の進退を左右する総裁選が前倒しで実施されるかどうかが焦点だ。党所属の国会議員と地方組織の代表に意思確認が行われる。内閣支持率の上昇が報じられた報道各社の世論調査などを背景に、首相は続投に強気の姿勢だが、党内の退陣要求は広がりつつあり、閣内からも前倒しに賛成する議員が相次いでいる。

 国民不在の内向きな党内抗争を続ければ、国民との意識の隔たりの解消は遠のくばかりであることを党全体で自覚すべきだ。

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