相互の信頼をより高め、日本の主体性を発揮できる関係に発展させることが重要だ。
高市早苗首相が6年ぶりに来日したトランプ米大統領と会談した。首相は初の対面での会談で「日米同盟の新たな黄金時代を共につくりたい」と伝えると、トランプ氏は「日米関係はかつてないほど強固になる」と応じ、一層の関係強化に意欲を示した。
日米同盟は経済、安全保障の分野にとどまらず、日本外交の基軸だ。ただ「米国第一」を掲げ、保護主義的な政策を進めるトランプ氏は、同盟国に対しても強権的な振る舞いをためらわない。関税交渉などで日米関係の不安定化が懸念された中、両首脳が同盟の重要性を共有したのは意義深い。
故安倍晋三元首相と強固な信頼関係を築いたトランプ氏は、安倍氏と政治信条の近い首相にも好印象を抱いたようだ。良くも悪くも国際社会に影響の大きいトランプ氏と太いパイプを築き、国益につなげることが求められる。
首相は、所信表明演説で表明した防衛費支出を国内総生産(GDP)比2%に増額する目標を2年前倒しして本年度に達成する方針を伝えた。トランプ氏は評価したものの、米国側は非公式にGDP比3・5%の防衛費支出を要求している。今後も在日米軍の駐留経費の負担増、防衛装備品の購入などを要求してくるのは確実だ。
今回の会談では、相互関税を巡り、日本が約束した5500億ドルの対米投資の着実な履行に向けた文書に署名した。ただ投資先はトランプ氏が選ぶほか、日本側が資金拠出を中止した場合、米国は関税を引き上げられる。米側に有利な内容であるのは否めない。
あらゆる要求に応じ、対米追従の姿勢を続けていては、国益は守れない。毅然(きぜん)とした姿勢で対応してこそ、両国の信頼関係が高まることを忘れてはならない。
中東和平を推進したとして、首相はトランプ氏をノーベル平和賞に推薦すると伝えた。しかしパレスチナ自治区ガザでは停戦発効後も空爆などが続いている。トランプ氏が「1日で終わらせる」と発言していたロシアのウクライナ侵攻も解決への道筋が見えない。平和賞受賞は時期尚早といえる。
トランプ氏は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明し、国連などへの資金拠出停止を断行している。こうした独善的な手法が、世界の安定を揺るがす要因となっている。「新たな黄金時代」を目指すのであれば、首相は同盟国として国際協調の重要性を粘り強く訴える必要がある。
