渡り鳥の飛来が本格化しているのと同時に、各地で鳥インフルエンザの確認が相次ぎ、大流行が懸念されている。県内の養鶏農家などで発生すれば、各方面に深刻な影響を及ぼす。きめ細かな対策を実践し、感染を防ぎたい。
北海道白老町の養鶏場で10月下旬、今シーズン初めて高病原性の鳥インフルエンザの感染が確認された。その後、同じ北海道の別の養鶏場で採卵鶏から検出された。
今月上旬には新潟県胎内市の2カ所の養鶏場の採卵鶏から高病原性ウイルスの感染が判明した。計90万羽が殺処分となり、それぞれの養鶏場周辺は鶏や卵の移動制限などが講じられた。
農林水産省によると、11月前半に国内の養鶏場で4例発生したのは14道県で51事例が発生し、900万羽以上が殺処分された昨シーズンや、過去最多の発生となった3年前の流行と同じ状況という。
野鳥の感染も広がっている。山形県では今月5日に回収された野生のノスリの死骸からウイルスが東北で今季初めて検出された。
隣県で鳥インフルの確認が相次いだ状況を踏まえれば、県内でも野鳥などからいつウイルスが検出されてもおかしくない。ウイルスは排せつ物などから拡散する。人に感染する恐れはないが、渡り鳥の飛来地などに近づかず、多数の野鳥の死骸を見つけた場合はすぐ行政機関に連絡する必要がある。
鳥インフルは近年、世界中で猛威を振るっている。養鶏場での対策は、ウイルスの侵入を防ぐことに尽きる。最近の農場は大規模化が進んでおり、飼育する全ての鶏の殺処分を余儀なくされると、経営存続が危ぶまれる事態となる。肉や卵の供給量や価格などにも影響する。物価高に苦しむ家計への追い打ちになりかねない。
県内の養鶏場では過去2年間、ウイルスは検出されていない。各農場は、出入りする人や車などの消毒を徹底し、野鳥やウイルスを媒介する小動物の侵入を防ぐための対策を早急に点検してほしい。
県などは、養鶏場での感染を想定し、殺処分や鶏舎の消毒などの防疫措置への備えに万全を期す必要がある。
政府は、感染対策として予防ワクチン導入を検討している。ただ国内の採卵鶏は1億羽を超えるとみられ、費用や作業の手間などが負担となり、その費用対効果を疑問視する声もある。
まずは有事に備え、リスク低減を図るべきだろう。政府は、農場を複数区域に分ける「分割管理」を推奨している。こうした施設整備への支援も強化してほしい。
