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「にぎわう会津坂下」創出、蔵元がワイン造り挑戦 曙酒造

2025/12/01 08:00

「良いブドウも栽培できている。120年の歴史の上に新たな挑戦を積み重ね、世界に誇れるワインを造りたい」と意気込みを口にする鈴木さん

 会津坂下の魅力を広く発信したい―。創業120年の歴史を持つ曙酒造(会津坂下町)は、町内の敷地にワイナリーの建設を進めている。福島県内の蔵元として初のワイン造りへの挑戦となる。来年7月の開業を目指しており、自社製品販売所やサウナも併設する計画。伝統の酒造りに加えてワインを新たな名産とし、長時間滞在できる施設で会津坂下に観光客を呼び込む。

 ワインは辛口を中心とした白ワインに仕上げる方針で、来秋の出荷を目指す。木造平屋建ての施設に併設するサウナは発酵音をBGMとし、薪ストーブのサウナなどを設ける。販売所では限定の日本酒やブドウジュース、オリジナルグッズなどを売り出す。酒蔵の特色を生かした新規事業に取り組むことで、新たな雇用創出にもつなげたい考えだ。社長の鈴木孝市さん(41)は「お酒が好きな人も飲めない人も楽しめるようにし、町の良さを体感できる場所としたい」と語る。

 蔵元6代目の鈴木さんは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経験し、生まれ育った土地で事業を継続できるありがたさを実感。全国のコメをブレンドした「絆(きずな)舞(まい)」の醸造を手がけながら、各地からの支援の大きさも感じた。震災後も地元で事業を継続できているが、町内に滞在する人の少なさを危惧するようになった。観光客が滞在できる施設が乏しく、町の良さを伝え切れていない。人口減少で町の将来も危ぶまれる中、「醸造を通じて何とかしたい」とし、ワイナリーの建設を計画した。

 「日本酒以外にも原料から一貫して会津で生産し、自社で責任を持って食卓に届けたい」と考えた鈴木さん。原料のブドウは、会津若松市や喜多方市などの休眠畑を活用して2018年から生産を開始した。酒類製造免許取得を前に製造したブドウジュースが24年に完成。今月20日ごろから「アケボノノジュース」として販売する予定で、「甘く酸味のあるジュースとなった。ワインもおいしくなると思う」と手応えを口にする。

 事業は、地域密着型の起業や新規事業を支援する総務省の補助を得て進めている。開業に向けて鈴木さんは、「挑戦を続ける酒蔵が会津坂下町にあることを知ってもらい、町に興味を持ってほしい」と力を込めた。

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