サッカーのいわきFCがJ2で3年目のシーズンを終えた。通算成績は15勝11分け12敗、最終順位は9位と昨季と同じだが、一時は最下位まで落ちたなかで徐々に勝ち点を積み上げ、一桁順位を2季連続で確保したのは評価できる。
今季も若手主体のチームらしく持ち味である高い運動量と、球際の強さを生かしたプレーは、群雄割拠のリーグの中でも大きな武器となった。勝ち星を逃した開幕から9試合の中で6試合は無得点と苦しんだが、初勝利を飾った第10節以降は、29戦中16試合で2点以上を奪うなど、攻撃的なサッカーが息を吹き返した。
シーズン途中の主力の退団も乗り越えた。昨季18得点を記録したFW谷村海那が7月に移籍し、得点力の低下が懸念されたが、チーム最年長のMF山下優人のセットプレーを起点にDF陣も得点を重ね、新加入の選手もチームに順応した。個々の選手が役割や戦術を理解し、攻撃の幅は広がった。
いわきは負け試合が昨季より2試合減ったものの、総失点は3点増え、無失点に抑えた試合は14試合から8試合に減った。今季、J2を初制覇した水戸は、総得点はいわきと同じだったが、総失点の数はいわきを10点下回った。
実力伯仲のリーグで「1点」の重みは増している、いわきは敗れた12試合のうち、7試合は1点に涙をのんだ。先制を許してしまうと特に厳しい展開を強いられた。
いわきは勝ち点にして7点差でJ1昇格プレーオフを逃した。失点は集中力を欠いたプレーが起点になるケースが目立った。1年を通して勝ち点を積み上げるためには、守備力の強化は避けられない。
今季、ホーム戦の累計入場者は過去最多の8万3063人を記録した。1試合平均で4372人となり、J3時代の2022年から倍増した。スタジアムをチームカラーの赤に染め、懸命に声援を送るサポーターの力は年々大きくなっている。チームのホーム戦の勝率も昨季を上回った。
序盤の出遅れを取り戻すようにホーム、アウェー戦を問わず結果を残し、順位を上げた選手らの奮闘ぶりも影響しただろう。来季もチームとサポーターの力が相乗効果を生むように期待したい。
チームを運営する、いわきスポーツクラブは設立から10年となった。いわき市の小名浜港で進めているJ1クラブの要件を満たした新ホームスタジアムの整備計画は9月に承認された。今季はJ1昇格に向け、大きく前進した1年だった。来季も悲願達成への歩みを着実に進めてもらいたい。
