インバウンド(訪日客)の増加などを受け、全国的に自治体の枠を超えた連携で誘客を図る動きが出ている。県内でも異なる地域の特性を結び付けた、新たな旅の形を提案していくことが必要だ。
県南と奥会津を中心とする12市町村が、協議会を設置し観光を軸にした広域連携に乗り出す。参加するのは、白河、西郷、天栄、下郷、檜枝岐、只見、南会津、柳津、三島、金山、昭和、会津美里の各市町村。東北道の白河、白河中央スマートの両インターチェンジや新幹線が停車するJR新白河駅を「玄関口」として、奥会津へ旅行客をいざなう態勢を強化する。
12市町村を合わせた面積は約4100平方キロで、埼玉県より大きなエリアとなる。県によれば、近隣市町村の枠組みを超えた連携は県内でも珍しい取り組みという。12市町村には、首都圏から近く交通アクセスに恵まれ、白河ラーメンのブランドでも知られた白河を軸に、観光客が自然や歴史、文化などの観光資源が豊かな奥会津を巡るプランをつくり、交流人口の拡大を図ってもらいたい。
県などでつくる観光復興推進委員会が実施したウェブ調査で、県外の人に観光地や特産品などについて知っている県内の地区を選んでもらうと、会津地区が4割強でトップだった。今回連携する南会津地区と県南地区は、ともに2割弱にとどまっている。
広域連携の会合では、神奈川県藤沢市や茅ケ崎市などを「湘南」と呼ぶように、12市町村を知ってもらうための新たなエリア名を選定することが議論されている。併せて、観光客が魅力を感じるような「旅のテーマ」も打ち出す予定だ。12市町村の担当者は、交流サイト(SNS)も使った広報なども効果的に実施し、エリアの知名度を高めていってほしい。
エリア内には、白河市の南湖公園や下郷町の大内宿、檜枝岐村の尾瀬、会津美里町の伊佐須美神社、JR只見線沿いの絶景などの観光地がある。ただ、それらを結んだ周遊ルートを組む場合、観光地間を移動する距離の長さが課題の一つとされている。
広域連携のPR資料は、全国初の「飛び出す絵本」形式のパンフレットとすることになっている。幹線道路沿いの風景の魅力なども記すことで、マイカーや観光バスなどで訪れる旅行者に、移動を旅の一部として楽しんでもらう戦略を描く。広大なエリア内にある各地のグルメスポットなどを巡ってもらう企画なども組み合わせ、長い移動を魅力に変える取り組みを充実させることを求めたい。
