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【12月6日付社説】市街地のクマ対応/出没を想定し警戒の維持を

2025/12/06 07:55

 県内の広い範囲で雪が降るなど、例年であればクマが冬眠を始める時期に入った。しかし、県内でのクマの目撃は続いており、油断はできない状況だ。

 先月下旬ごろから、中通りの市街地の中心部にクマが出没している。なかでも福島市の森合地区では、地区に現れたクマが列車に衝突していなくなったと思っていたら、間を置かず別の個体や親子連れが姿を見せている。

 県は、山の周辺にドングリなどがなくなり、餌を求めて市街地の中心部に出てきたとみている。同様の状況は2023年度にも確認されたが、今年11月の全県での目撃件数は490件で、23年度の同時期の5倍に及ぶ。県と市町村は、例年より多く市街地での出没が続くと想定し、住民に警戒の徹底を呼びかけなければならない。

 クマが出没した地区では、学校が授業を取りやめたり、児童生徒の送迎を保護者に依頼したりするなどの対応を余儀なくされている。近隣の住民も、外出や散歩を遠慮するなど、不安を抱えたまま日常生活を送っている。

 学校の安全確保を巡っては、国がクマへの対応マニュアルの策定や見直しを求めている。他県では登校前や在校時、下校時などそれぞれの状況に応じた付き添い、見守りの方法を定めた事例がある。教育委員会と学校は、児童生徒に被害がないよう、保護者が送迎できない場合も想定した実践的な対策の充実を図ってもらいたい。

 店舗や施設などでは、クマが入り込まない手だてを講じる必要がある。近くで目撃情報があった場合には、自動ドアを手動に切り替えることが有効だ。クマはガラスを認識できないため、クマの目の高さの位置に目印を付けたり、目玉模様を描いたシールを貼ったりして、突進による侵入を防ぐ取り組みも進めてほしい。

 国は今年、市街地で銃を使いクマを駆除する「緊急銃猟」のガイドラインを定めた。これまでに山形県や秋田県などで計40件以上が行われている。県内では11月に喜多方市で初めて実施されたが、住宅近くの箱わなに入ったクマを安全に運搬することが難しいため、銃で駆除したものだった。

 クマが家屋などに居座り、住民に危害が及ぶ状況になれば、緊急銃猟の実施は避けられない。市町村には、県警や地元猟友会などと連携し、迅速な駆除ができるよう備えを再確認することを求めたい。実弾使用が難しい場合は、県が麻酔銃を使用できる人材を広域派遣する仕組みを活用し、速やかな捕獲につなげることが重要だ。

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