巨大地震の発生可能性が平常時より相対的に高まったとして、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表された県内10市町は9日、自主避難所を開設するなど対策を急いだ。
南相馬市は、同市原町区のひがし生涯学習センターに自主避難所を開設した。簡易ベッドや毛布のほか、飲料水を準備。職員が24時間常駐し、1週間程度開く予定だ。9日午後5時現在、避難者はいないという。
民生委員・児童委員を務める同市の鈴木礼子さん(69)は東日本大震災を踏まえ、普段から備蓄の確認を欠かさないようにしてきたといい「14年前を思い出す。油断できない」と気を引き締めた。
いわき市は24時間態勢で警戒に当たる。各部署に対し、地震発生時に速やかな対応が取れるよう初動対応の再確認を促したほか、避難行動要支援者の支援に当たる家族やケアマネジャーらへの呼びかけも求めた。公共施設や各企業には、避難誘導や避難経路を改めて確認することを要請した。同市沿岸部に位置する平薄磯地区の鈴木幸長区長(72)は、11月の避難訓練で地区の避難所の備蓄品の確認を済ませているという。「余震が来るかもしれないと思って注意したい」と冷静に受け止めていた。
相馬市は「災害備蓄品は定期的に点検している」とし、市民に冷静な対応を求めた。新地、富岡、楢葉、広野、浪江、双葉、大熊の7町は防災メールや防災無線などを通じて住民に注意を呼びかける方針。
県も態勢強化
県は9日、県庁で関係部局長会議を開き、地震発生の可能性が高まる今後1週間程度は警戒態勢を強化し、県民などへの情報発信に取り組む方針を確認した。
県のホームページや防災アプリなどを活用し、避難路や避難場所の確認のほか、地震発生に備えた準備などを呼びかける。内堀雅雄知事は「地震への警戒を怠ることなく、県民の安全確保を最優先に緊張感を持って対応してほしい」と指示した。県警は、救出・救助部隊の出動に向けた準備を進めている。
津波注意報で自治体対応
県内で津波注意報が発令された8日深夜、沿岸部の自治体は対応に追われた。
いわき市は災害対策本部を設置し、沿岸部にある防災無線で警戒を呼びかけた。市によると、勿来地区の金山公民館に1世帯2人が避難したため、9日午前1時10分に避難所として開設した。2人は約1時間後に帰宅し、同2時15分に閉鎖した。このほか、津波避難ビルに指定している市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館には一時、5人が身を寄せた。
浪江町は9日午前0時に町内2カ所に避難所を開設し、計7人が一時的に避難した。避難した30代女性は3月から仕事で転居し、町内の幾世橋地区で暮らし始めたばかりだといい「津波への不安が大きくなって、家に居るのが怖かった」と語った。町は9日、児童生徒の安全を考慮し、町内のなみえ創成小中、認定こども園「浪江にじいろこども園」を休校・休園とした。
富岡町と広野町は町内の公共施設に避難所を開設。富岡町では8人、広野町では7人が避難したが、いずれも9日未明に帰宅した。相馬市は8日午後11時50分、中央公民館に自主避難所を開設。同市では東日本大震災に加え、2021、22年と2年連続で震度6強の地震が発生しており、市地域防災対策室の木村幸治室長補佐は「職員は皆、経験を糧に落ち着いて対応できた」と話した。南相馬市はテレビや県のサイトで情報収集するなどした。県警は本部と沿岸6署に災害警備対策室を設置した。
