正常な細胞を守る照射法

 

 現在の標準的な「がん」治療は、手術・抗がん剤(化学療法)・放射線治療の三つです。放射線を当てることによって「がん」を治療する方法は、手術や抗がん剤と勝るとも劣らない選択肢の一つです。

 放射線治療の際には、その放射線を当てたい場所の周りにある正常な細胞にできるだけ放射線が当たらないようさまざまな工夫がなされています。

 例えば、身体の表面にある乳がんの治療のために、身体の正面から向かって真っすぐ一方向に放射線を当てるとすると、手前の皮膚や乳房の先にある肺や心臓に放射線が多く当たってしまいます。そうしないための一つの方法として、身体の横両側から乳房だけをかすめるように放射線を当てる(接線照射)といった方法が取られます。

 また、身体の内部にある前立腺がんの治療では、周りにある直腸・ぼうこうなどに放射線が当たりすぎないよう、前立腺を中心にさまざまな方向からいろいろな強さの放射線を少しずつ当てて、前立腺だけに放射線を集中するという方法が取られます。

 このような工夫を行うことで、副作用を減らし効果のしっかりある治療が実現しているのです。