骨髄移植は全身に放射線

 

 現在の標準的な「がん」治療は、手術・抗がん剤(化学療法)・放射線治療の三つです。乳房であれば肺や心臓を避けたり、前立腺であれば直腸やぼうこうを避けたりと、放射線治療の際には、当てたい場所には放射線を集中させ、その周りにある正常な細胞にはできるだけ放射線が当たらないようさまざまな工夫がなされます。

 その一方で、治療のために全身に放射線を当てる場合があります。血液のがんである白血病の治療の一つである骨髄移植を行う場合です。血液は全身にあるため身体の一部だけというわけにはいきません。朝と夕に3日間、6回に分けて合計12シーベルト(1200万マイクロシーベルト)ほどの放射線を全身に当てます。

 日常でいわれる放射線の量とは桁違いです。それだけの「量」の放射線になると、悪い細胞を根絶やしにする一方で、副作用として一時的に気持ち悪い、脱毛や下痢、出血といった症状が出る場合があり、医療者はそれを乗り越えるサポートをします。

 そこに他人からもらった血液のもとになる細胞(骨髄)を点滴(移植)し、自分と他人の血液を入れ替えるのが骨髄移植です。この有効な治療により、より多くの方が白血病を克服できるようになりました。