「化学物質」がん引き起こす

 

 放射線を大量に浴びると「がん」になるのではないか?と言われることがあります。「がん」について知るために、少しその歴史を振り返ります。

 18世紀の末にロンドンの煙突の掃除人の中で陰のうのがんが多いという報告がなされました。「すす」のせいです。それから100年ほどたつと、化学工業の発展に伴い、工場や鉱山で働く人たちの中にさまざまな種類の職業がんが報告されるようになります。その多くはコールタールなどにばく露されたために起こる皮膚がんでした。染料を使う人たちのぼうこうがんもよく知られた問題でした。

 そんな中、東ヨーロッパのウラン鉱山で働く人たちの中の肺がんも報告されるようになります。天然に存在する放射性物質であるウランはラドンへと変化しますが、それを吸い込むことで肺が長期にわたり、大量の放射線を浴びるために起こるものでした。

 ちなみに、世界で最初に化学物質が「がん」を引き起こすことを実験室で確かめたのは日本の山極勝三郎博士でした。1915年、博士はウサギの耳にコールタールを塗り続けることで皮膚がんができることを見つけ、化学物質によって人工的にがんができてしまうことを証明したのです。