甲状腺がんの世代に違い

 

 これまでの数多くの原子力事故の中で、チェルノブイリと福島での事故の二つがレベル7(=深刻な事故)とランク付けされています。この二つはレベルが同じとされてはいるものの、状況や、その後の対策など異なる点が多くあります。

 放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく量は、チェルノブイリ事故に比べ、福島では2桁程度小さかったことが知られています。また日本では日常の食事で(放射性ではない)通常のヨウ素を多く摂取するため、放射性ヨウ素がブロックされやすい状況でした。事故の後、超音波による甲状腺の検査が行われていますが、甲状腺がんが実際に見つかる世代も二つの事故で異なることが分かっています。

 一般的に放射線を浴びることで引き起こされる甲状腺がんは、年齢が低いほどリスクが高い。チェルノブイリでは事故時の年齢がより低いほど、多くの甲状腺がんが見つかりました。福島はその逆です。年齢が低いとほとんど見つからず、年齢が上がるとより多く見つかりました。これは放射線によって引き起こされるものではない、通常の甲状腺がんと同じパターンです。今回の事故で放射線によって甲状腺がんが増えているとは考えづらい根拠の一つです。