作業員の環境"大幅改善" 廃炉現場、被ばく・労災事故防ぐ鍵

 

 東京電力福島第1原発の廃炉現場では、過酷な事故収束作業が進められるとともに、作業員の被ばくや労災事故の危険を減らすため、除染や休憩施設の整備など労働環境の改善が図られてきた。一方、原子炉建屋周辺などは依然として高線量で、廃炉作業の難しさに変わりはない。長期にわたる廃炉を成し遂げるためには、構内で働く1日約7000人の作業員がさらに安全に、安心して作業できる労働環境の実現が求められている。

 第1原発では事故当初、放射性物質を吸い込まないよう、構内全域で全面マスクの着用が義務付けられていた。しかし原子炉の冷却が安定することで、放射性物質の放出量が減少。さらに除染なども進み、現在は1~4号機周辺を除く約90%が全面マスク着用の対象外となっている。

 これまで、全面マスクの着用が作業中の事故につながるという指摘があった。着用範囲の縮小で、作業員の視野が広がり、会話がしやすくなるなど、作業の安全確保や作業効率の向上が期待されている。

 ただ、汚染水を保管している地上タンク群や水処理施設内での作業時は、操作ミスなどで汚染水が漏れた場合、放射性物質を体内に取り込む恐れがあるため、引き続き全面マスクの着用が義務付けられている。

 大型休憩所で食事 事故直後は...休息は仮設テント

 第1原発敷地内には、約1200人収容の休憩フロアがある9階建ての大型休憩所が5月、完成した。放射線対策で建物の窓は限りなく減らし、施設内の空間放射線量は毎時0.1マイクロシーベルト以下と周辺の0.3~0.4マイクロシーベルトを下回っている。

 東電によると、原発事故発生当初は十分な休憩スペースがなく、緊急時対策本部がある免震重要棟内のほか、仮設テントなどを設置し、休憩所を確保していた。

 大型休憩所には、大熊町大川原地区の給食センターで作られた温かい食事を提供する食堂が設けられた。給食センターの完成までは、コンビニエンスストアで購入した弁当などを食べるしかなかった。 

 敷地内の5.3%「防護服は不要」

 第1原発では現在、敷地全体約350万平方メートルのうちの5.3%に当たる18万4500平方メートル(標準的なサッカーグラウンド約26面分)で、放射性物質の付着を防ぐ防護服を着用しなくても移動することができる。

 東電によると、事故当初はJヴィレッジ(広野、楢葉町)で防護服を着用し、第1原発に入構していた。除染や放射性物質の飛散を防ぐ対策が進んだことで、一般作業服で移動できるエリアが拡大した。防護服ではない一般の作業着で移動できるエリアには、構内に出入りする際に通過する入退域管理施設や免震重要棟、企業棟の周辺などが設定されている。