第1原発「デブリ」取り出しへ一歩 2号機・堆積物「動かせた」

 
3号機建屋上部から見た福島第1原発西側(山側)の様子。斜面にはコンクリートが吹き付けられている=2月20日

 東京電力福島第1原発の廃炉作業では、2号機の原子炉格納容器内部調査で、溶け落ちた核燃料(デブリ)とみられる堆積物の可動性を初めて確認した。デブリ取り出しに向け一歩ずつ前進する一方、3号機からの使用済み核燃料の搬出を巡っては機器のトラブルが相次ぎ、東電の品質管理体制の甘さや作業の困難さが改めて浮き彫りとなった。

 「堆積物が動いた」。2号機の原子炉格納容器内部調査が行われた2月13日。遠隔装置が小石状の堆積物を持ち上げると、モニターで見ていた東電や装置開発などに携わった東芝エネルギーシステムズの社員らの声が響いた。

 昨年1月の2号機調査でデブリとみられる堆積物が確認されて約1年。新たな機器を開発する期間は短かったが、装置開発や操作指揮を担った同社機械・振動技術開発担当主務の清水智得氏は「堆積物の可動性を確認するという目的が達成できた」と手応えを口にする。

 調査では格納容器側面の貫通部からパイプ型の機器を挿入し、2本の「指」が開閉する装置を格納容器底部につり下げ、この指がトングのように堆積物をつかんだ。空間放射線量や温度も測定し、昨年1月の調査と同程度の値を確認。原子炉圧力容器直下の7カ所の線量は毎時6.4~7.6シーベルトで底部の堆積物に近づくと高くなることが分かった。

 堆積物をつかんだ指の開閉は昨年の調査で使った装置に備わっていた、カメラと照明を離す機能を転用した。装置の仕様を考えた同社機械システム設計第3担当の杉浦鉄宰氏は「今、持っている技術で何を追加したらどういうことができるか。模索する部分が苦労した」と振り返る。

 19年度下期に採取

 今回の2号機の調査結果は、2019年度下期に2号機で予定される少量のデブリ採取への知見となる。動かせなかった堆積物も確認され、本格的なデブリ取り出しには新たな機器の開発も必要となる可能性がある。

 管理を担当する東電福島第1廃炉推進カンパニーの鈴木紘則氏は最難関とされるデブリ取り出しに向け、「南相馬市出身であり、地元住民の一人として安心・安全な環境で廃炉作業を続ける」と気を引き締める。