漁業は先行きが『不透明』 トリチウム含む処理水の取り扱い懸念

 
タイに向けて出荷される県産ヒラメ

 風評の影響で一時大きく落ち込んだ農産物や観光が回復基調にある中で、先行きが不透明なのが漁業だ。

 漁業関係者が今後の復興に向け特に懸念するのが第1原発の汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含む処理水の取り扱いだ。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は希釈して排水の法令基準を下回れば海洋放出を容認する立場を示している。仮に海洋放出が決まれば、風評がさらに高まる懸念もあることから、漁業関係者らは強く反発。県漁連の野崎哲会長は昨年8月の公聴会で「海洋放出は漁業に壊滅的な打撃を与えることは必至で、これまでの努力と再興意欲を奪ってしまう」と述べた。

 トリチウム水の海洋放出は国内外の原発で行われており、漁業への影響はないとされる。ただ第1原発への注目度は高く、仮に海洋放出する際には安全性などについての周知策が重要となる。トリチウム水の取り扱いは国の小委員会で議論が続いている。

 現状伝える取り組みも

 外務省と日本貿易振興機構(ジェトロ)は海外の報道関係者を招いた視察事業を行うなど漁業の現状を伝える取り組みを行っている。

 昨年7月には、日本料理店で開催予定だった本県産ヒラメなどを提供するフェアが中止となったタイなど4カ国の新聞記者を招待。県や相馬双葉漁協の職員が試験操業の現状や水産物の自主検査の状況の説明をした。