津波避難ビルの建設地。今月中に造成工事が完了し、新年度から建設に入る=いわき市久之浜地区 |
いわき市北部に位置する久之浜地区。海を望む同地区では東日本大震災で35人が津波の犠牲となり、9人が行方不明となっている。市は現在、久之浜沿岸地域の防災拠点となる津波避難ビルの建設を進めている。本年度中に造成工事が完了、14年度から建設工事に着手し、15年度に完成する見通しだ。
まちづくりにも活用
海と近接する久之浜地区には国道6号、常磐線が通る。しかし、地区内の道は狭く、踏切部分での避難路遮断など、同市の他の津波被災地区と異なる地域課題を抱える。東日本大震災を教訓に、大津波に襲われた場合、一時的に避難する場所を確保するため津波避難ビルを建設する。
建物規模は5分間の移動で駆け込むことができることを想定し計画している。地域住民に加え、通行人の人数も含めた人口密度から割り出した260人を収容可能とする。旧久之浜・大久支所(現在は取り壊し、移転中)の道路を挟んだ場所に建設する。
旧支所付近は震災で1〜2メートル浸水した。また被災による地盤沈下、災害発生時の地盤沈下を考慮し、建物は5メートル以上(海水面より9メートル以上)の部分に避難スペースを設ける。
避難スペースの他に災害対策本部や、非常食・飲料・発電機、簡易トイレ、救命救急活動機器などを備えた防災倉庫なども設ける。平時は防災訓練や地元住民の集会、生涯学習活動などのまちづくり活動の場として活用する。1階に支所と公民館を置き、支所の防災機能拠点と公民館のまちづくり活動拠点を一体・集約化した。
住民の新たな防災拠点への期待は大きい。付近に住む無職猪狩美智子さん(65)は「震災後、地域の人も少なくなって寂しかった。少しでも震災前のようなにぎわいが戻れば」と話す。
同地区では、津波被災地の宅地を海岸から離れた場所に移す震災復興土地区画整理事業も進行中。震災を教訓とした再生を図り、災害に強いまちづくりが着々と進む。