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【最終処分まで20年・約束の行方】政府ようやく本腰 「重み」問われる局面

2025/03/22 10:00

除染土の県外最終処分に向けた全閣僚会議の初会合で「政府を挙げ、全力で取り組む」と呼びかけた林官房長官。残り20年、約束の重みが問われる局面に入る=2024年12月、首相官邸

 「福島の復興のためには除去土壌などを県外で最終処分することが必要だ。政府を挙げ、全力で取り組む」

 昨年12月20日、林芳正官房長官が全閣僚ら22人に呼びかけた。

 政府はこの日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌などの県外処分に向け、全ての省庁にまたがる会議を初開催した。

 会合では〈1〉再生利用の推進〈2〉理解醸成〈3〉県外最終処分への取り組み―を3本柱とし、春に基本方針、夏に2045年3月までの工程表を策定することを決めた。特に再生利用を重視し、林氏は「各省庁一丸となり、さまざまな案件を創出してほしい」と指示した。

 2カ月後、環境省は同期間の大まかな工程や基本的考えを示した。ただ、処分地選定などの時間軸は盛り込まれず、政府全体としてどこまで方向性を具体化できるかが焦点になる。

 「10年たってようやく政府一体で臨むこと自体、批判されるべきだ。『一応やっている』という政権のポーズに過ぎない」

 環境省に政策を助言する有識者の一人は、動きの遅さを痛烈に批判する。45年までの県外処分を「難航必至」とみる向きは当初から支配的だったためだ。

 県外処分への道筋はこの10年、ほぼ環境省内だけで検討されてきた。技術開発が中心だったこともあるが、同省幹部の一人は「ほかの省庁は当事者意識がわれわれと少し違う」と温度差をにじませる。

 「再生利用はまず県内で取り組む必要がある」。2月、伊沢史朗双葉町長は「私見」と前置きした上で、町の公共事業に土壌を再生利用する意向を表明した。

 同町で中間貯蔵を受け入れた際、県外最終処分の法定化を求めたのは伊沢氏自身。周辺からは「(半永久的に留め置く)再生利用は事実上の最終処分にほかならず、県内で進めば法の趣旨に反する」(地元議員)などと批判の声も聞こえる。

 伊沢氏は「どこかの自治体が中間貯蔵を受け入れ、犠牲にならなければ復興は進まなかった。第1原発のエネルギーが首都圏で使われていたと知らない人もあまりに多い」と指摘。発言の真意について「県外処分に責任ある立場としてこうした経緯を発信し、理解醸成に先鞭(せんべん)をつける」と語った。

 政府が掲げる「全国民的な理解醸成」は遅々として進まない。最も負担を受け続ける「犠牲者」として覚悟を示し、県内外に一石を投じる狙いだった。

 石破茂首相は今月8日、福島民友新聞社の取材に応じ「県外最終処分は法律で決まっており、きちんと守る」と断言した。

 約束の期限まで残り20年。発言の重みが問われる局面に入る。(最終処分問題取材班) 第1部おわり

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