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【7月21日付社説】参院選・与党大敗/民意尊重し政権枠組み探れ

2025/07/21 08:10

 第27回参院選は与党の自民、公明両党が大幅に議席を減らし、大敗を喫した。与党は改選過半数を割り込み、石破茂首相が勝敗ラインに設定した非改選を含めた過半数の維持は微妙な情勢だ。石破政権は昨年の衆院選に続き、国民から「不信任」を突きつけられたといえる。首相は重く受け止め、自らの進退を判断すべきだ。

 衆院で少数与党に転落した石破政権はこれまで一部の野党と政策ごとに連携し、予算や法案を何とか成立させてきた。しかし、「政治とカネ」の問題の象徴とされている企業・団体献金の見直しは三度も結論を先送りし、けじめをつけてこなかった。

 国民の関心が高い米価高騰への対応は、後手に回った。参院選の最大の争点となった物価高対策では、選挙向けのばらまきとの批判を懸念し、首相は現金給付に後ろ向きだったが、方針を変え、公約に掲げた。党内外から首相の指導力を疑問視する声が上がった。

 選挙戦のさなかには参院予算委員長が能登半島地震を巡り、耳を疑う失言を犯した。衆院選で国民から厳しい審判を下されたにもかかわらず、政権・与党は政治不信を払拭するどころか、迷走や失態を繰り返した。負託に応えない与党に国民が見切りをつけた結果だ。

 今後、政権の枠組みがどうなるかが最大の焦点になる。自公は野党との新たな連携を模索するだろう。事実上の「政権選択選挙」とされたが、野党第1党の立憲民主党、衆院選に続き伸長した国民民主党は政権構想を示しておらず、政局は一気に流動化する。

 関税を巡るトランプ米政権との交渉が正念場を迎えるなか、政治空白は許されない。各党は民意を最大限に尊重して、政権の枠組みを協議する必要がある。

 野党各党は消費税の減税などを訴え、議席を増やした。有権者は物価高に収束の兆しが見えないなか、これまで成果が得られていない現金給付などより、より実効性の高い政策を求めたといえる。

 ただ、具体的な減税策は時限的に税率を引き下げる案、食料品に限定する案などさまざまで、財源についても考え方が異なる。選挙で聞こえが良い公約を唱えるだけでなく、将来につけを回さず、暮らしを着実に改善させる道筋を国会で真剣に議論してほしい。

 福島選挙区は自民党現職の森雅子氏が、立憲民主党の石原洋三郎氏、参政党の大山里幸子氏らとの接戦を制し、4選を果たした。逆風下の選挙戦で感じた県民の思いを踏まえ、震災復興などの課題解決に取り組んでもらいたい。

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