• X
  • facebook
  • line

【10月5日付社説】自民新総裁に高市氏/古い体質から脱却できるか

2025/10/05 08:10

 既成政党への国民の不信を拭い去り、政治に信頼を取り戻せるのか。史上初の女性リーダーの決断力と指導力が問われる。

 自民党の新総裁に高市早苗前経済安全保障担当相が選ばれた。1回目の投票でトップに立った高市氏は、決選投票で国会議員票を大幅に上積みし、小泉進次郎農相に競り勝った。15日に召集が見込まれる臨時国会で新首相に指名される公算が大きい。

 女性の政治参加が遅れている日本では初めての首相だが、海外では多くの女性リーダーが活躍している。先進7カ国(G7)ではかつて英国のサッチャー元首相、最近もドイツのメルケル元首相が国内で優れた指導力を発揮し、国際社会でも大きな存在感を示した。

 日本の喫緊の課題は人口減少、高齢化だ。高市氏自身も夫を介護していることで知られている。経済では国際競争力の低下が指摘されて久しい。高市氏には女性の政治家としてのこれまでの経験や教訓、新たな感性などを多くの政策に反映し、山積する課題の克服につなげてほしい。

 自民党は大敗した7月の参院選を検証した報告書で、派閥の裏金事件に象徴される政治とカネの問題を党の「不信の底流」と分析した。解党的出直しをうたう党の新総裁に求められるのは、政治改革を断行し、党の古い体質を改めることであるのは明白だ。

 しかし今回の総裁選で、政治改革を巡る議論は低調だった。高市氏は政治資金の透明化に意欲を示したものの、裏金事件に関係した議員の要職起用については「適材適所」との立場を崩さなかった。

 自民と公明、立憲民主の3党は中低所得者に税控除と給付を同時に行う「給付付き税額控除」の議論とともに、企業・団体献金の規制強化を巡る協議にも着手している。高市氏は、政治資金の透明性が高まる具体策を示し、野党と連携して国民が納得できる改革を実行していく必要がある。

 高市氏は党政調会長を務めていた2013年6月、原発の再稼働を巡り「(東京電力)福島第1原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない」と述べた。その後、批判を受けて発言を撤回した経緯がある。

 本県の復興、原発の廃炉作業は途上にあり、2万人以上の県民が避難している。高市氏は総裁選出後のあいさつで、「多くの方の不安を希望に変える党にしていく」と語った。高市氏は本県の現状をつぶさに把握し、多くの県民が未来に希望を抱けるよう全力で復興施策に取り組んでもらいたい。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line