福島市の会社員渡辺智恵さん(43)は2023年9月、慢性腎不全により生体腎移植の手術を受けた。腎臓を提供したのは実妹でプロレスラー・気象予報士の春日(はるひ)萌花さん(本名非公表)。術後2年が経過し、姉妹はともにそれぞれの道で活躍している。
渡辺さんは20代前半の頃から、病院にかかるたびに「腎臓の数値が良くない」と指摘されていた。だが、自覚症状はなく、深刻には考えていなかった。
状況が変わったのは15年に長女を妊娠してからだった。「産婦人科で出産するかどうかを尋ねられ、出産ならば透析治療になると言われた」。慢性腎不全の影響でおなかの子の成長が止まり、予定日よりも1カ月早く帝王切開で出産した。1836グラムで生まれた長女は約1カ月、保育器で育てられた。
23年、渡辺さんの腎臓の数値が急激に悪化した。現役のプロレスラーとしてリングで戦っていた妹に「(腎臓を)もらっていいかな」と尋ねると、春日さんから快諾を得た。アスリートが臓器提供者になるのはまれなことだった。
福島医大病院で同年9月に移植手術が行われた。拒絶反応は起こらず、術後2年が経過したが渡辺さんの体調に大きな変化はない。春日さんも24年7月にリングに復帰。同年11月には福島市で開かれた大会に出場し、渡辺さん一家の前で見事に勝利した。
現在は夫憲一郎さん(54)の会社を手伝うとともに、結婚式の司会などを務める渡辺さん。「以前は娘が大きくなるまでその姿を見られるのだろうかと心配していた。移植を受けて、娘の結婚式をこの目で見たいという気持ちになっている」と話す。
23日に同市で開かれるDDTプロレスリング福島大会「ゴージャスナイト」に春日さんは昨年に続いて出場、遠藤有栖選手(会津若松市出身)らと対戦する。渡辺さんは「妹には無理をしないでほしい。一方で、妹のかっこいい姿を福島の人たちに見てもらいたい」とほほ笑む。
