福島医大糖尿病内分泌代謝内科学講座の渡辺桐子助教、島袋充生主任教授らの研究チームは、人工知能(AI)によって糖尿病を五つのタイプに分類し、糖尿病の診断時に、合併症の腎臓病発症や透析のリスクを予測できることを明らかにした。従来一つの病気と扱われていた糖尿病のタイプが診断時に分かるようになり、個々に適した予防策や治療法を選択できるという。
研究成果をまとめた論文が、欧州糖尿病学会の国際医学雑誌ディアベトロジアに公開された。糖尿病の合併症である糖尿病関連腎臓病は、国内で最も多い透析導入の原因疾患。糖尿病と診断された時点で、腎臓の機能が将来どの程度悪くなるかを予測できないことが腎臓病を防ぐ上で課題になっている。健診などで尿をつくる腎機能や蛋白(たんぱく)尿が分かった時には既に進行しており、透析導入を防げないケースが多くあるという。
このため研究では、1万人以上の糖尿病患者のデータをAIで分析。〈1〉若い年齢で発症し、自己免疫が関わる「重症自己免疫性糖尿病」〈2〉インスリンの分泌能力が著しく低下した「重症インスリン不足糖尿病」〈3〉インスリンの効果が悪く肥満がある「重症インスリン抵抗性糖尿病」〈4〉肥満があるが合併症が起こりにくい「軽症肥満関連糖尿病」〈5〉高齢で発症する「軽症加齢関連糖尿病」―の五つに分類できることを確認した。
その結果、〈3〉のタイプで腎臓病の発症や症状が悪化するリスクが最も高いことや、タイプによって腎臓病の発症要因、注意すべき点が異なることが分かった。これにより、健診などで一人一人の糖尿病のタイプを早期に判定し、個人の特性に合わせた医療「個別化医療」につなげられるという。
